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悠久録(過去の悠久録はこちら)
No.846:命をつなぐ
(4月14日分)

ソメイヨシノは、江戸末期から明治期にかけて園芸家が創出したという。花の見事さと散り際の
いさぎよさから好まれ、明治初期の全国にまたたく間に普及した▼富国強兵の時代である。国
を挙げて教育と武力を重視した時代に、ソメイヨシノは校庭、兵舎、駅舎に植栽されていく。こう
して桜はますます日本人のDNAとなり、今の景観を形成した▼だが園芸品種である。全ては
クローンであって、そのルーツはごく少数のサクラに辿りつくに過ぎない。そのような命であって
も、春になれば爛漫とした花姿を示す。人も同じなのだろう。紡がれた命が今に伝わる。しかも
人は自らのルーツを遡ることができる▼『良寛堂建立の記録―佐藤耐雪の用留を読む』(考古
堂書店)は、佐藤耐雪の孫娘の著作である。耐雪は良寛堂(出雲崎)を建設するため、力を尽
くした。その艱難辛苦の記録が「用留」である。同著には血縁者が持つ愛情があふれている。
『咸臨丸難航図を描いた幕府海軍士官』(文芸社)は主人公の曾孫が執筆。先祖の事績を世
に出したいとの思いは、普遍的なのだろう。先人の事績をゆかりの者が偲び、世に伝えるケー
スは多い▼太平洋戦争中にNHK海外放送を担当した日系2世のカナダ人は、戦後、祖国へ
の裏切りとし連合軍から厳しい取り調べをうけた。半生を記録した『テディーズ・アワー』(文芸
社文庫)は、その息子が著す。全編にあふれるのは1国の利害を超える平和への熱い思いで
ある▼ソメイヨシノの輝きに限らない。命の連鎖はいつも何かを伝えている。(とけいそう)

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