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愛縁奇縁:既往目次
No.152:予防拘束の是非(2017.7.17)
「テロ等防止法」はプラスかマイナスか

○2017年7月11日は将来への禍根を残した日となるのか、それとも安心・安全をもたらした
画期的な日になるのか。いずれにしても極めて象徴的な日になるであろう。
それはどういうことか。わが国の刑法の在り方について大きな転換をもたらした法律の施行日
だからである。法律の名称は「組織犯罪処罰法」という。正式には「組織的な犯罪の処罰及び
犯罪収益の規制等に関する法律」である。
政府がテロ防止に必要と繰り返し強調してきたため、一般的には「テロ等防止法」とされてい
る。

○この法律の要点は、実行前の逮捕を可能にしている点だろう。法で定めた277の行為につ
いて、実行するために2人以上で話し合い計画、計画書をつくったり資金を用意したりすると、
処罰の対象になる。
従来からのわが国では現実に行為をしない限り、司法の手は及ばない。ありていにいえば、喋
っているだけでは罪に問われない。だから過激な談合を誰かとしても、とりあえずは、能天気な
アホで済む。
 ストーカー被害者が助けを求めても防げなかったケースは、具体的な犯罪事実を前提とする
現行法の趣旨から、大きな影響を受けている。

○今回施行の同法はこの点を改めて、実行前の準備段階で逮捕する。
計画に基づいてメモをつくり、資金の手当てをするとアウト。物品の手配をするのもアウト。関
係場所の下見をするのもアウトである。だが預金を××円引き下ろした。ナイフを購入した。
現地へ旅行したなどと、生活費、日曜大工、観光旅行との区別は難しいかもしれない。捜査当
局による監視強化や拡大解釈による人権侵害が発生しないのか。懸念も根強い。だから司法
機関の恣意を許すとして、疑義は多い。

○法はいろいろ細かな規則を設けて、乱用を防ごうとする姿勢である。
まず対象となる犯罪を特定している。この特定した犯罪が277である。さらにテロリズム集団
その他の組織的犯罪集団(現在でいえばいわゆる暴力団も含む)に該当することとする。当然
のことであるが、そうした集団に該当するとの判断は、だれがするのか。司法当局の恣意にな
らないのか。
法の趣旨から行けば、2人でも集団に認定されるのだろう。

○実行の時は1人でも2人を処罰できる規定もある。計画段階で2人が協議しておれば、2人
の内1人だけの行動で「準備行為」となる。つまり逮捕されてしまう。
例えば100人が合議し、内99人の考えが変わって何もしなかったとしても、1人の行動で残り
99人はアウトになる。つまり芋づる式にみんな検挙できる。
例外もある。実行に着手する前に自首した者は、その刑を減刑するという。おかみにも情けが
あるということである。

〇懸念は杞憂と思いたい。テロ集団に対してだけの法であって、国民の安心・安全を担うため
の法であると思いたい。そのために予防的な対応への道を開いたものと理解したい。しかし治
安維持法(1925年制定、1945年廃止)など、過去の例もある。
法の暴走を防ぐことは肝要である。その手立ては様々な情報発信によって国民の全ての階層
で、穏やかな思考や行動を確立していくに尽きるだろう。
(黄色い風見鶏)


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