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愛縁奇縁
No.105:問われるA級戦犯合祀の是非

〇毎年8月になると靖国参拝が議論に登る。戦争で亡くなった父祖が祀られている同神社へ
の参拝は、当然のこととされる。その一方で国(政府)の責任者が参拝することは、先の戦争
是認に繋がるとして、非難の的になっている。
戦中の歴史が、靖国神社参拝を戦争賛美として受け止められるのである。

〇問題が複雑になったのは、1978年(昭和53年)に、極東裁判での死刑及び獄中死の14名
を「昭和時代の殉難者」として合祀したことにある。極東裁判は太平洋戦争での責任を問い戦
争犯罪者を特定した。その刑死者を合祀すれば、一般戦死者は浮かばれないとの指摘であ
る。
合祀は当時の靖国神社宮司が独断に近い形で行ったという。国民的コンセンサスは無かっ
た。なによりもこの措置に当時の天皇陛下(昭和天皇)は不快感を表明され、以後天皇の参拝
は行われていない。現天皇もその意を汲んで参拝したことは無い。
このことに心を痛めた中曽根康弘首相(当時)は遺族に対し、自発的に分祀を認めるように促
した。A級戦犯の霊を靖国神社から異なる場所に移せば、全て解決と考えたのである。ほぼ分
祀の了解が取れたとのことであったが、最後に東条英機元首相の遺族が猛烈に反対し、実現
に至らなかったと聞く。

〇戦争責任を追及する諸外国の批判もある。
1996年に橋下龍太郎首相(当時)が参拝したのが7月だった。小泉純一郎首相(当時)は8
月13日に参拝した。いずれも中国などの反応を気遣って8月15日を避けたのである。昨年の
安倍晋三首相の参拝には米国までも「失望」感を表明した。四面楚歌の状況で、今年はとうと
う参拝しなかった。
国会議員のなかには「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長尾辻秀久元参院副
議長)を組織し、超党派で参拝する向きがある。今年は衆参議員84人が参拝した。
議論はなかなか定まらず、賛否両論のなかで揺れているのが実態である。

〇靖国神社参拝に代わって「全国戦没者追悼式」が8月15日に行われる。天皇皇后両陛下も
出席される。公式の慰霊はこの追悼式である。
諸外国ではどうか。外国にも戦争で亡くなった者への慰霊施設はある。
米国の「アーリントン国立墓地」の無名戦士の墓には諸外国の元首がお参りする。24時間衛
兵が立哨。英霊を祀るにふさわしい形態である。しかしここに祀られている兵士は、第1次世
界大戦、第2次世界大戦、朝鮮戦争での無名戦死者各1体のみである。
フランスでは凱旋門の地下が追悼墓地である。毎年フランス大統領の主催で各国大使を招い
て式典が挙行される。だがここでも無名戦士1名の遺体のみが埋葬されているにすぎない。

〇国のために殉じた父祖への追悼が、極東裁判でのA級戦犯を合祀していることで、政治問
題化したことはまことに惜しい。
来年は戦後70年である。中曽根氏の案を含めて、妥当な解決策を探る時期にきているのでは
ないだろうか。(黄色い風見鶏)

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