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(4月28日分)
落語の「花見酒」は愉快である。花見が盛んな江戸の春に、長住まいの熊さんと辰つぁんが花
見をする。そして、この機会に少々金儲けをしようではないかと、2人は夢を描く▼酒を仕入れ てコップ1杯を10銭で売ることにした。2人の胸中はザクザクと入る銭で満杯である。だが、途 中で熊さんがのどの渇きを覚えた。そこで「辰つぁんや、酒を一杯売ってくれ」。もちろん代金は きちんと払う。元気になった熊さんだが、次に辰つぁんののどが渇く。しかも先ほどの10銭が手 元にある▼こうして2人は同じ10銭を使って酒を味わう。だが花見会場に着いた時、売るべき 酒は全部飲んでいた。2人はそれでも売り上げの計算をする。たくさんの銭があるはずと目論 んだのであるが、財布をさかさにしても出てきたのは10銭だけだった。あの酒はどこへ行っ た!。全身から力が抜ける▼だが2人には酒の仕入れ代金が追いかけてきた。売り上げがゼ ロなのに、酒の債務だけは残っている。酒屋の親父は厳しい。信用してつけで売っただけ、さ あ返していただきましょう。債務が残るなんて、考えていなかった。経済学者の笠新太郎(190 0〜67)は『花見酒の経済』(62年刊)に熊さんと辰つぁんを登場させ、信用の膨張に警鐘を鳴 らす▼株価が2万円を超えた。日本銀行の異次元ともいわれる超金融緩和が効いたようであ る。だが膨張しすぎた信用は、どこかで収束しなければならない。酒屋の親父が出てきては困 る。熊さんと辰つぁんの二の舞になるなと、笠は今も言っている(とけいそう)
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