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悠久録(過去の悠久録はこちら)
No.793:血の復讐
(8月23日分)

佐世保で高校生が同級生を殺害する事件があった。加害者は精神的に異常な状態だったよう
である。このような精神異常の場合、責任能力が無いとされ無罪になる確率が高い。被害者
は救われない▼罰を与える者は常に国家であって、故人が不用意に復讐をすれば、それは罪
になりかねない。個人による報復が日常化すれば、殺伐した世の中になるだろう。だが罰を国
家に集約した結果、遺族は癒されないケースが増加した▼アルバニアには被害者が報復する
習慣があると聞く。その習慣を「血讐」という。現代も続いている「血の復讐」であって、加害者
の一族に対し、被害者の一族が同様の復讐をするのである。殺人であれば同じような年齢の
者を加害者の一族から選び、その者に対し被害者の一族が復讐する。作家初瀬礼氏は血讐
をテーマに同名の小説を著した。小説『血讐』は第1回日本エンタメ小説大賞優秀賞を受賞し
ている▼山口県光市で起きた母子殺害事件も、残された夫の怒りは頂点にあったであろう。だ
がその処罰は司法に委ねるしか無い。被害者の心情は苦しい。古書店「まんだらけ」(東京)は
万引きされた鉄人28号の人形(時価数十万円らしい)を返して欲しいとし、返却されなければ犯
人をネット上で公開するとした▼当然とする意見が多いのであるが、司法の手をまたずに自力
での現状復帰を求める行為は、『血讐』のテーマに似ている。議論は輻輳、紆余曲折し結局司
法に委ねることになった。法治国家として当然かもしれないが、釈然としないのも確かである。
(とけいそう)
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