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この人に聞く
郷土史『前川のあゆみ』を発刊

長岡市前川地区でこのほど郷土史『前川のあゆみ』を発刊。詳細な研究に注目が集まってい
る。前川地区は、市街地より南へ約3`bの信濃川右岸に位置する。JR線の前川駅周辺の
前島町、上前島町、青島町、青山町、青山新町が前川地区を構成する。明治22年に前島、上
前島、青島、青山の4集落が合併し前川村になり、その後上組村、宮内町を経て、長岡市の
一角を占める。約600世帯、約2000人が暮らしている。
同地区は信濃川の氾濫をたびたび受けてきた。それだけに地区住民の絆は固い。今回発刊
になった郷土史『前川のあゆみ』もそのような地区住民の思いが凝集している。
そこで、「前川のあゆみ研究会」代表で同著編集委員長である鷲尾純一さん(65)に発刊まで
の話を聞いた。

先祖から伝わる地区内の「絆」を残したい

鷲尾さんは、「前川駅がある。前川小学校もある。それなのに前川という地名はないのですか
との質問を受ける」ことがあるという。「4つの集落がいつころ成立したのかなどを記録に残した
いと思った」と語る。同地区は信濃川の洪水などの災害が多く発生している地域であり、その
歴史を後世に伝えることが地域の課題でもあった。
事務局長の堀井實さん(75)は、そうした思いを「先人の努力のつながりの中で今を活かされて
いることに感謝したい」とし、「編集活動を通じて前川の人々の絆をいっそう深めたい」とする。
メンバーは皆、郷土史作成に挑むのは今回が初めてだった。だが、先祖から伝わる地区内の
「絆」を後世に残したいとする思いは、編集委員会に集った11人(当初)のメンバー全員の共通
した思いだった。

6年間、心血を注いだ

まず「前川のあゆみ研究会」を設立し、鷲尾さんが住職をつとめる託念寺(前島町)を活動拠
点にした。そして同著発刊のため6年間、心血を注いだ。古文書などは文字一つでも読み解き
が難しい。委員らは長岡郷土史研究会の古文書講座で一から勉強した。「(古文書を)読み解
くのには大変苦労した」と皆口をそろえる。
毎回新しい原稿を全員で読みあわせ、関連した史料で確認を取っていった。メンバーには長
岡郷土史研究会の会員が数名いたが多くは、専門外だった。しかし情熱にすぐるものはない。
メンバー全員が「前川のことをもっと知りたい、前川の記録を残さなければ」との共通の思いで
力を合わせて制作したという。
編集作業を進めるうちに11人のうち2人が病で亡くなるという、哀しいこともあった。
苦労を重ねて本年11月、同著が完成し、委員には喜びが大きい(印刷=北越印刷梶j。    
   
カラー印刷の古地図から地区の昔がよみがえる

同書は全10章で構成。前川地区の始まりから現在にかけての出来事を239ページにわたって
まとめている。前川地区に起こった災害の歴史や戦災体験をはじめ、昔話や前川の始まりか
ら近年に至るまでのまちづくりまで、住人が支え合い築いてきた前川の歴史が豊富な古文書
(史料)や写真で語っている。
古文書は多くの場合失われることが多い。だが、同地区では江戸時代の庄屋から現在の町内
会まで、連綿として古文書や古地図が引き継がれてきた。見つかった史料には、村の境界を
書いた古地図や、同地区で起こった川の氾濫で流された村の古地図なども出てきたという。こ
のような例は少ないという。
鷲尾さんはいくつも発見できた古地図について「集落の境界などを明確にするものだった」とい
う。「昔は信濃川などの氾濫によって、わからなくなってしまう村の境界線を守るための物」だっ
た。同書には、多くの古地図がカラーで掲載されており、前川地区の昔がよみがえる。

貴重な資料を残してくれたことに感謝

さらに新たに発見した資料なども豊富に掲載する。埋もれた情報も地元住民からの聞きとりな
どを元に掘り起こし記載した。
事務局の岸和義さん(64)は、市立図書館に寄贈されていた史料の他に新しい史料を発見した
ときのことを「お宝発見の瞬間だった」と回想する。図録や古文書などは、前川地区の各公民
館に、たくさん残っていた。それらは木箱に入り押し入れなどに保管されていた。先人たちが洪
水など幾多の災害にも負けず、貴重な資料を残してくれたことに、編集員の皆が感謝する。
発見時には、劣化しているものがほとんどで、虫食い穴やタバコの火の跡がついたものもあっ
たという。同委員会の加藤通彦さんは、「中には紙くずのような状態の物もあった。昔大切にし
ていたものが、時代と共にいらないものになったのかもしれない」と述懐する。
だが時代を超えて先人たちが各地域で残してきた貴重な史料に、編集委員会は感謝する。

戦争体験者への取材も

同著には戦争の記憶や地区に起こった災害、地区内の神社や昔話なども広範に編集し、掲
載した。
戦争体験者への取材では90歳を超える人に話を聞いた。「我々が想像できないようなことを聞
くことができた。話し方にも臨場感があって、昭和を伝える意味で非常にいい取材ができた」
と、熱く語る。
制作にあたっては同委員会の委員一人ひとりが役割分担し、担当分野を持った。そして作成し
た原稿を持ち寄って皆で検討した。
事務局長の堀井實さんは、「話し合っている途中、脱線したりして、それもまた楽しかった」と話
す。同編集委員会を通じていっそうに絆が深まり、「本当にいいメンバーだった」と喜びを見せ
ている。

新たなコミュニティづくりに取り組んでいく

同研究会では同書を活かして、新しく住民になった人との新たなコミュニティ・地域づくりの推進
へ取り組んでいくとしている。
「前川のあゆみ」編集委員会メンバーは次の 通り(敬称略)。
▽鷲尾純一(編集委員長)
▽堀井 實(事務局長)
▽岸 和義(事務局)
▽室橋徳光(故)
▽吉原新吾
▽平澤関一
▽小林章栄
▽加藤清一
▽平沢忠男(故)
▽加藤通彦
▽高津武夫





 
 

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カタツムリに魅せられた半世紀
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