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愛縁奇縁
No.138:企業心理が冷え込んでいる
超金融緩和と円安をなぜ活かせないのか

(2016.4.2掲載)

○経営再建中のシャープと台湾のホンハイ精密工業は4月2日、買収にかかる契約を締結し
た。これでシャープは台湾企業の傘下に入る。
日本の有力企業の身売りには複雑な感慨を生んでいる。「液晶の次も液晶」と巨額投資を重
ねたが失敗。再建のための交渉過程でも、シャープの側の甘い判断、むしろ優柔不断さが目
立った。

○会社の規模が違う。国内では家電大手と呼ばれているシャープの売り上げは約2兆3千億
円。確かに巨額の売り上げであるが、一方ホンハイは約13兆円である。その差は大きい。
さらに大きく異なるのが社員数である。シャープの社員数は約4万4千人で、この人員コストに
あえいでいる。一方ホンハイの社員は約95万人とも約130万人とも言う。桁が違う。
違いはまだある。シャープは赤字であるから買収の事態になったが、ではホンハイはどうか。
当期利益は約4000億円で、利上げ利益率は20%に近い。

○もっとも大きな違いは時価総額(発行済み株数×株価)だろう。シャープの時価総額は200
0億円少々まで落ち込んでいる。10年前に比較すると10分の1である。ホンハイの時価総額は
約4兆円。比較にならない。
こうした比較をするとシャープはグローバルにみればいかにも小さい。その意思決定は質にお
いても、スピードにおいてもホンハイにかなわない。シャープの動きは、まるで巨大な図体にな
ったために身動きが取れなくなった太古の恐竜みたいである。
それでも両者は契約を取り交わし、ホンハイは約7000億円、シャープの時価総額の3倍近い
額を支払う。

○このような海外との差を意識してのことであろうか。企業心理が冷え込んでいるという。
日本銀行が調査した短期経済観測(いわゆる短観)が悪化している。短観は先行きを「良い」
とする割合から「悪い」と判断する割合をマイナスした数値である。これが大企業製造業でプラ
ス6になった。前回調査から6ポイント悪化して、2013年以来の水準に落ち込んだ。
日銀黒田総裁の異次元の経済対策は全く効いていない。

○短観のこの結果は、日本を代表する企業の意見である。そして、その背景には円高や新興
国の景気減速があるという。日本の景気は悪くなっていると判断するのが正しいのだろう。
円高が続けばさらに悪化するとも言う。だが今は円安ではないのか。100円を切って円高に
急伸していた為替は、120円近辺まで円安にもどっている。それでも「円高で先行き不安」とは
どういうことか。しかも原油はかってない安さである。石油価格の低下は、大きなメリットがある
はずである。
シャープとホンハイの一件などで、企業の経営マインドが萎縮するのでは、情けない。

○そのうえ更なる景気対策を求める向きが増加した。日本を代表する企業の平均的な見解は
ずいぶん弱気である。
お蔭で4月1日の株価は全面安になった。4日連続の下げで、累計の下げ幅は1000円近くに
なる。識者の解説によれば円高が続けばさらに悪化するという。だが120円の為替増場はど
のようにみても円高には思えない。異次元の金融緩和にマイナス金利まであるのに、大手企
業の経営マインドはずいぶん萎縮している。
今一度の奮起が欲しい。
(黄色い風見鶏)

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