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愛縁奇縁
No.136:お金を持っているだけでは富を生まない時代
「マイナス金利」の行方

(2016.3.15掲載)
○日本銀行は1月29日、マイナス金利を導入することを決定。2月16日から実施している。
対象となる預金は、「準備預金制度に関する法律」(1957年施行)で定めた「法定準備預金
額」を超える額である。計算上は僅少のはずであるが、年間約80兆円の国債買入代金が、そ
のまま日銀の預金口座に残り続けている。おかげで膨大な規模に膨れあがり、現在では「法
定準備預金額」を超える預金は、総額で約200兆円という。黒田日銀総裁の「異次元の金融
緩和政策」のおかげである。

○「異次元の金融緩和政策」では、国債の買入代金が民間企業への貸出に回ることが狙いだ
った。民間にお金が回りさえすれば、経済は活性化するはずである。
だが貸出には手間暇がかかる。焦げ付くリスクもある。昔、「貸し渋り」や「貸し剥がし」をして自
己防衛に走った業界である。先行き不透明な時期に、むやみな融資はしたくない。日銀に預け
ておくのは焦げ付きの心配がなく、安全である。手間暇もかからない。利息も付く。こうしてその
金額は前述のとおり膨れあがったのである。
それでも日銀はこれまで利息を支払っていたが、取ることに変更した。3月15日が最初の利息
計算日だった。従前は受け取りだったのに、15日からは支払いである。インパクトは大きい。

○諸外国ではすでに先例があるというが、日本では初めての経験になった。マイナス金利を決
めた日銀政策員会でも賛成5、反対4と賛否は伯仲している。
とりあえずは、日銀の目論見通りにはなっていない。円高阻止にはならず、株価は乱高下し、
黒田バズーカ砲の効果を帳消しにした。2%の物価上昇も目標時期を延期。いつ実現するか
は不透明である。
マイナス金利の効果は見えてこない。

○とはいえ、金利のスタートラインがマイナスになったことは大きい。世の中の金利体系は、下
がることになった。すでに銀行は顧客からの預金について、現行の0・02%から0・019%下
げて、0・001%にした。この金利では1億円でも利息は1000円にすぎない。
リターン(受け取り)がここまで縮小すれば、お金を金融資産に投資しても富を入手できない。
運用での利益が期待できなくなったとして、各種のファンドは募集停止や顧客への返金が始ま
った。お金はそのままでは働かなくなった。

○資本主義は貨幣万能であって、お金はそれ自体で増加する。しかも利息には利息が付く(複
利)。このため、その増加テンポは意外に早く大きい。
だがこれからは、お金それ自体では利益が上がらない。コストを考えれば、0・001%は実質
マイナスだろう。お金を何に投資するのか。諦めて現金を貸金庫に保管するのか。資産保全
に苦労する時代が始まっている。
資本主義が終焉に一歩近づいたのか。「より早く、より遠く、より合理的に」とする資本主義の
行動原理が変わるのか。庭用金庫がヒット商品になる時代はなにかおかしい。
(黄色い風見鶏)

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No.135:マイナス金利がスタート
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