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愛縁奇縁
No.129:行政の勇み足をとめた住民投票
デモも表現の一形態

2015.9.8掲載

〇つくば市(茨城県)では立派な公園を作るとしたが、予算総額が305億円だった。いったい
どんな公園を作ろうとしたのか。金額だけ聞く限りでは随分豪華な公園に感じる。
市民の反対は根強く、ついに住民投票になった。その結果は、反対が賛成を上回り8割を占
めた。市原健一つくば市長は9月2日、市議会本会議で「住民投票の結果を尊重し、事業は行
わない」と述べ、白紙撤回するとしている。

○投票率は47・30%で、2012年の市長選の54・54%を下回っている。それでも、投票した市
民の8割が反対したのであるから、やはり大きな意味がある。
つくば市の年間予算は約724億円(平成27年度一般予算)。305億円は42%にもなる。
年間予算の約半分を投入して公園を作るなど、市原市長はよほど市民の建康に気配りする方
のようだ。市民思いのはずであったが、肝心の市民からそっぽを向かれた。

○これを長岡市に比較すればどうなるだろう。
長岡市の一般会計予算は1538億円(平成27年度)であるから、つくば市のように42%を公園
に投入するとなれば、約646億円になる。600億円を超える公園を造りたいと市が言い出せ
ば、造園関係業者以外に大きな異論が湧き上がるだろう。
つくば市はバランス感覚を失っていた。
住民投票を請求した市民団体は、「現在の計画を少しでも変更してほしい人は反対に」と呼び
かけていた。対する市長側は、「公園の建設には賛成だが、見直してほしいという人は賛成
に」と呼びかけたという。
結局、市長がトップダウンで進める強引な市政運営に対して、市民がノーを突きつけたかたち
である。

○行政の政策に対して市民はどのように発言をしていくか。
わが国では、選挙で選ばれた代表者が物事を決めていく間接民主主義を採用している。だか
ら議会での採決によることが基本である。だが選挙ですべての案件が予測され、それへの賛
否が投票に凝縮したとは限らない。投票時には予測していなかった事柄も課題にはなる。
安保法制も消費税率のアップも、選挙時に課題になったであろうか。それでも物事は決めてい
かなければならない。
それらを調整するのが表現の自由である。住民投票制度やデモ行進も直接民主主義の一手
法として位置付けて良い。
先の市町村合併では、住民投票は住民意思の決定に大きな貢献をしてきた。

○とはいえ、住民投票の結果を無条件に採用することは、為政者としては怖い。どのような結
果が出るのか。政策の是非への判定は不安感がよぎろう。
大阪の橋下徹市長は、8月31日の国会周辺でのデモを批判して「たったあれだけの人数で国
家の意思が決定されるなんて、民主主義の否定だ」と発言したとか。だがそれは暴論だろう。
世論を無視する意見は耳目を引くが政治家としては幼稚である。そのための手法として、間接
民主主義のほかに直接の手法(住民投票やデモ)を認めているのが、成熟した国家の姿であ
る。
(社主)



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