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愛縁奇縁
No.112:イスラム国に敵視された日本


〇安倍総理が中東歴訪にあたって経済援助2億ドル(約230億円)を打ち出した。イスラム国
がこれに反発したのか、混乱の地域に入り込んだ2人の日本人が、捕虜になった。釈放の条
件としての身代金が同じ2億ドルである。応じなければ射殺するという。すでに1人は殺害。そ
して残った1人も殺害になった。
安倍総理が約束した2億ドルの経済援助は。関係国からの要請に基づく経済援助だったのど
うかか。その是非は別にして、イスラム国から見れば敵対行為になった。
事態はイラクのパイロットと死刑囚の帰趨をも巻き込み、混とんとしている。囚われた方の母が
国会を訪れたが、首相も官房長官も会わなかった。外国との交渉とは違う。自国民の災厄に
なぜ会おうとしないのか。解せぬことが多いが、こういう時こそ、国家の庇護が必要である。

〇中東地域の混乱が収まらない。発端は1948年のイスラエル建国にある。1947年、国連
でパレスチナをユダヤ国家、アラブ国家、国連関連管理地区の3つに分ける分割案が採択に
なり、1948年5月14日、イギリスによる委任統治期間が終了後、テルアビブで初代首相ベン
グリオンによる独立宣言が行われた。
この独立の背景には第2次世界大戦時にドイツナチス政権の圧政があった。ジェノサイドとも
ホロコーストとも呼称される虐殺で大勢のユダヤ人が命を失った。

〇国連の決定はそのような人類の過ちを糺そうとするものだった。故国を失ったユダヤ人に遠
い父祖の地に建国させることで、民族の安寧と争乱の終止符を願っていた。
第2次世界大戦を戦った国々、なかでも英米が積極的なリードを取った決議でもあった。
しかし、新たな建国の地とされた地域は2000年もの長い間アラブ人が居住していた。国連決
議はそのような現状をすべて無視していたことから事態は混迷する。

〇当然アラブ側は決議を認めない。それが現在まで続くアラブ地域の騒乱のスタートでもあっ
た。
第1次中東戦争(1948年)から今日まで英米両国は変わらずにイスラエルを支持し、アラブ諸
国はこれに敵対している。アラブ各国政府が妥協しても、民衆は反発。それがPLOを生み、ア
ルカイダを生んでいる。数次にわたる戦争や人質事件などは、枚挙にいとまない。

〇イスラム国は、そのような歴史の事実に学んだのかもしれない。
石油が大量に噴出する中近東を地盤に、既存の国際秩序を無視しての建国である。強圧的な
支配が多くの混乱を引き起こし、国際テロの温床にもなっている。
新国家の維持は武力であり、軍事力維持の費用は原油の密輸と誘拐の身代金で賄うという。
原油はともかく誘拐は個人にとって脅威である。

〇善意が一方の当事者には悪意に映ることは有り得る。善悪が混とんとしている紛争への関
与はリスクが高まる。だが政府は国際協調の名のもとに紛争に関与してしまった。いまさら取
り消せない。国民には援助の結果生じるかもしれないリスクを説明して欲しかった。
国の政策が及ぼす個人へのリスクに、国はあまりにも無頓着である。2人に合掌。(黄色い風
見鶏)


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