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悠久録(過去の悠久録はこちら)
(12月2日分)
女性の問い。「夕べはどこにいたの?」。男性の答。「そんな昔のことは覚えていないね」。女性
「今夜、会ってくれる?」。男性「そんなに先のことはわからない」▼映画『カサブランカ』の有名 になったセリフである。男性はハンフリー・ボガート。女性はイングリッド・バーグマン。当時の 人気俳優である。2人はフランスを占領したナチスドイツ軍に反抗。パルチザンの戦士だった。 だが戦争が2人を引き裂き、そして北アフリカのカサブランカで再会する▼印象的なシーンに 音楽(邦題「時の経つまま」)が流れる。ドーリー・ウィルソンが小さなピアノで歌っていた。時代 背景には戦争があり、ナチスドイツとフランスの抵抗運動があった。安全なアメリカへ何とか脱 出できないか。ただひとつの航空便を求めてカサブランカへ人は逃れてくる▼1942年の作品 である。その前年が真珠湾攻撃だった。古い映画である。2人の主役も今は鬼籍に入ってい る。映画の終幕近く「心はひとつさ。さぁ行くんだ。君の瞳に乾杯」が別れの言葉になる▼映画 に登場したピアノが24日、ニューヨークのオークションで340万ドル(約4億円)の値がついた。 どこの富豪が買ったのか。決して高級品のピアノとは思えないが、『カサブランカ』の時代を思 い返すには、最適な品かもしれない。第2次世界大戦を生き抜いた世代には、忘れる事のでき ない思い出が重なるのだろう▼だが思い出を4億円で購ったとしても、映画『カサブランカ』が 語った時代の哀しみは、変わるわけではない。(とけいそう)
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