長岡新聞:トップ
社主のプロフイール 
購読の申込みメールでOK。 1か月1851円です。
ライターを募集しています(0258−32−1933:希望の方は星野へ) 
新刊案内『長岡築城物語』、『いい湯めぐり温泉紀行』:詳しくはこちら
川柳、俳句、短歌に投稿しませんか:詳しくはこちら

悠久録(過去の悠久録はこちら)
No.1039:一杯のかけ蕎麦
(5月16日分)

14日は「母の日」だった。この日はカーネーションを贈る習慣である。多くの家庭で、母を囲ん
で和やかな交歓があったことだろう▼「母」と聞くとき童話『一杯のかけそば』(栗良平著)を思
い出す。バブル最盛期にフイーバ―。週刊誌が取り上げ、国会でも話題になった。泉ピン子の
母親役で、映画にもなった。「読む会」が全国にでき、作者名にあやかって「栗っ子の会」もでき
た▼当時は土地価格が暴騰し、株価も史上最高値を付けていた。景気の良い話があふれ、世
の中は浮かれていた。だがバブルの恩恵をうけながらも、多くの国民は一抹の不安を感じてい
たのだろう。その不安が流行を後押しした▼物語は大晦日の遅い時間、母親と2人の幼い息
子が蕎麦屋にやってくる。そして一杯のかけそばを注文する。具のない一番安いそばである。
蕎麦屋の店主は事情が分からないまま、3人に同情。増量したかけそばを出した▼父親を喪
って貧乏になった母と子は、実際は1・5杯分のそばを3人で分け合う。「美味しい」と声を上
げ、笑顔をこぼす。翌年の大晦日も、その翌年も、同じことが繰り返された。だがある年、3人
の来店は途絶える▼それから十数年後、成人した2人が母親を伴ってやって来た。今度は3
杯のかけそばを注文する。幼いとき、1年に1度のたのしみを与えてくれた母親への恩返しに、
成人した2人が決めたという。ようやくたどり着いた安寧の日に、読む人は涙を流したのである
▼「母の日」は過ぎているが、想いを伝えるのに遅すぎることはない。(とけいそう)



ライターを募集しています(0258−32−1933:希望の方は星野へ) 
購読の申込みも同番号へ
トップへ
戻る